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靴の製法について
2004.5.17 東京店:荒井 執筆
靴を購入する際、価格やデザイン、履き心地などは当然チェックされるでしょうが、「製法」について気に掛けたことはありますか?
靴屋さんによっては全く「製法」の表示がなされていなかったり、それについてよく分からないといった方もいるのではないのでしょうか?
そこで今回は、靴の「製法」について簡単にご案内させていただきます。

いきなりですが、ちょっと衝撃的な画像の靴をご覧下さい。
何と!ヒールが踵から完全に剥がれております。
あり得ない!」同僚の北君でしたらこうコメントするでしょう。

この靴の持ち主は、居酒屋の座敷に上がろうと靴を脱ごうとしていた時に壊れてしまったとのこと。
十分に靴紐を緩めることなく、片方の靴でもう一つの靴を押さえながら強引に足を抜こうとしたのだそうです。
「早く美味しいビールを飲みたい!」と、はやる気持ちは良く判るのですが...

それではどうしてヒールがこんな風に壊れてしまったのか?靴の製法を絡めながら少し紐解いてみたいと思います。
念のための補足
画像は部分的にしか映っていないため当エトスのストレートチップにも見えますが、エトスクラブのストレートチップではありません。
ご相談いただき靴を見せてもらった方には申し訳ないのですが、エトスご愛用者にこんな使い方はして欲しくないのが本音です×××

靴にはどんな製法があるの?・・・
靴の製法というのは「甲革」「表底」を繋ぐ底付け方法のことをいいます。
機械文明の進化と共に色々な靴の製法が生まれ、今では厳密に分けると30種類以上の製法があるといわれます。

代表的な製法としては、グッドイヤー・ウエルト製法マッケイ製法の2つが挙げられるのですがグッドイヤー・ウエルト製法質実剛健なイメージの英国靴に、
マッケイ製法エレガントなイタリア靴で多く見られるといいます。
この辺りは紳士のスーツ事情と同じようです。

★☆★ ちょっと一言:靴の原料について・・・ ★☆★
製法のご説明の前に、生活文化の違いによる靴へ与える影響について一言。
そもそも肉食文化の副産物である皮から靴が作るようになったのですが、同じ肉食でも、成牛を好んで食したという英国と、柔らかい肉の子牛を好んで食したイタリアでは、その副産物である皮革の厚さも違ってきます。
成牛から出来る革は厚くて硬い。子牛から出来る革は薄く柔らかい。
靴のデザインや製法の違いについて細かく突き詰めていくと、このような食文化の他に、気候や民族の気質などの違いも反映されているのだそうです。
稲作文化の日本では、わらじ下駄を履き物にしたことと同じなのです。

グッドイヤー・ウエルト製法とは・・・
産業革命を受けた1849年、アメリカのチャールズ・グッドイヤー2世によって開発された機械式のウエルテッド製法です。
イギリスで行われていた手作り靴のノウハウをそのままに残しております。
そして、靴の聖地と言われる英国のノーザンプトンで、そのグッドイヤー・ウエルテッド製法は第1次大戦の1910〜20年代には軍用の靴生産のピークを迎えました。

その名の通り、靴の底と甲を結ぶ細いウェルト(細革)という部分で甲・中底・本底を縫い付ける製法です。
ウェルト(細革)のお陰で何度も靴底を交換出来るのが利点
更にソールを細革に縫い付けてるので、地面から直接中底まで達する縫い目がなく耐浸水性に優れています。
雨の多い英国では必須の製法であったかも知れません。

頑強さを求める軍用の靴には、中底・中物(コルク)・表底の三層からなる底構造は歩けば歩くほどに中底がその人独自の形に凹み、専用のインソールを入れたように足に馴染んで行きます。

英国人がグッドイヤー・ウエルト製法の靴を大切に扱うということは、造りの頑丈さ、馴染みの良さ、履き心地の安定感、そして重厚なデザインの味わいが気質にあっているからかも知れませんね。

マッケイ製法とは・・・
1858年にこちらも米国で開発された製法ですが、後に「マッケイ」という人が改良機を発明しためマッケイ式と呼ばれるようになりました。

甲革・中底・表底をマッケイ縫いという一緒に糸で縫い付けます。
耐浸水性、耐久性では劣りますが、部品点数が少ないため底の返りが良く、履き心地も軽いのが特徴です。
雨が少なく陽気な気候のイタリアにマッケイ製法の靴が多いのは頷けますよね。

この製法は、ソールを接着し中底とソールを一緒に縫い付けてしまうものでグッドイヤー製法ほど手間がかからない為、広く普及しています。

グッドイヤー・ウエルト製法では重要な役割を持っている細革(ウェルト)もマッケイ製法ではデザインの一部でしかないためコバの部分がスマートです。

セメント製法について・・・
これは「セメント製法」という極めて簡単な作りの靴ですが、安く大量に製造できるので、実に現在流通している靴の9割はこの製法によるそうです。

接着剤で固定される為、糸の縫い目がなく耐浸水性には優れてはいますが、足から出る汗などの排湿性には劣る上、足にも馴染みにくいデメリットもあります。

それでは、最初にご紹介しました壊れた靴どんな製法なのか?というと、ヒールは接着剤のようなもので固定されていましたからセメント製法マッケイ製法の中間のような作りのようです。

★☆★ ちょっと一言:一概には見分けがつかない製法もあります・・・ ★☆★
靴の製法が判りにくい靴も数多く出回っています。
グッドイヤー・ウエルト製法でも革底に縫い糸を見せない仕掛け(伏せ縫い)がしていたり、マッケイ製法やセメンテッド製法でも、見せかけの単なる装飾でグッドイヤー製法のようなウェルトを貼り付けて縫い合わせている靴もあります。
マッケイ製法の場合は靴の中を見ると中底に縫い合わせた糸が見えますので、それで見分けることが出来ますが。。。

★☆★ 最後に一言:職人の粋な物作り・・・ ★☆★
エトスクラブの靴は、グッドイヤー・ウエルト製法です。
熟成された英国スタイルを日本人向けに昇華しそれも、職人の粋な振る舞いと伝統的思想を極めた「靴作り」です。
そして、そこにエレガントさと繊細な靴が蘇っているのです。