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靴クリームについて
2004.11.10 東京店:荒井 執筆
晩秋から初冬へと足早に移り過ぎそろそろコートが欲しくなる季節になろうとしていますが、皆さんいかがお過ごしでしょうか?
靴については、季節が変わってもいつも通り「靴クリーム」で磨くしかないのですが、寒くなったからといってお手入れを休みがちになったりしてはいませんか?

さて、今回は靴にコート代わりとして欠かすことの出来ない「靴クリーム」について取り上げてみたいと思います。

お手入れの方法や、靴磨き=泥だんごでもご紹介しましたシューケアーの代表的な3大靴クリーム(デリケートクリーム・補色クリーム・ビーワックス)のその主成分についてクローズアップします。

まずは、瓶のフタを開けると何とも爽やかな香りのするデリケートクリームから...

●○●M.モゥブレイ デリケートクリーム靴用栄養クリーム●○● (イタリア製)

【成分】ラノリン・油脂・有機溶剤
【用途】
乾燥による皮革のヒビ割れや劣化を防ぎ、保湿性、しなやかさを保つ。
履きおろす前の新品の靴全体に加えることで、水分や栄養分などを補給する。
【特徴】
水分が多く含まれている乳化性クリーム(ゼリー状)の為、ベタつかず皮革に深く浸透し乾燥から守る保湿効果がある。
革本来の自然な風合いを回復するばかりでなく、多少の傷は補修する。
無色ですので、靴に限らずバッグ・ベルトや小物・レザー衣料品などスエードを除くほとんどの革製品に使用できる。

このようにデリケートクリームは靴にとっては、素肌にとってのハンドクリームと同じ存在ですが、その成分表記をよく見てみると「ラノリン」いう物質が書いてありますが、これは一体何なのでしょうか?

さすがに私もここまでは知らず調べてみたのですが、ラノリンとはウールの原料である羊毛に付着しているの成分のこと。
ウールは一般に原毛から糸にする段階で洗毛といって原毛に付着した不純物や羊の油脂を洗い落とす処理をしますが、その過程で取れる油脂がラノリンなのです。
(蛇足ですが、ハリスツイードなど防寒性に優れる反面、粗野な風合いの生地がありますが、これらはこの洗毛段階でわざと油脂は落とさず残すことで糸の質感を粗野にしているのです。)

そして、このラノリンは特に水分を保持する保湿性が優れていることと、人の皮脂成分に構造が近いためラノリンクリームなどのスキンケアー商品などにも使われています。
(ちなみに、羊毛の有力な産地であるオーストラリアではこのラノリンクリームが観光土産としても人気だそうです。)

デリケートな手肌にも使えるクリームが革靴のクリームにも使われているのですね。
そうか...デリケートクリームを塗って残った分はそのまま肌に刷り込めば良いんだ...

続いては、同じくM.モゥブレイブランドの補色用クリームです。

●○●M.モゥブレイ 補色クリーム●○● (イタリア製)

【成分】ろう 油脂 有機溶剤
【用途】
退色した革に補色すると同時に艶と栄養を与える。
【特徴】
乳化性のため浸透性とクリームの延びが優れている。
磨き込むほどに、重厚感のある艶が出る。 ろう(蝋)分は少なめなのでベタつかない。
ここでちょっと一言:有機溶剤とは・・
靴クリームには、有機溶剤が必ず配合されていますが、この成分は汚れや古くなった靴クリームを取り除くというクリーナー的な働きをします。
 いわば、新しいクリームと古いクリームの入れ替えをしてくれているようなものです。
・・・うーん、なんだか判りにくいご説明で申し訳ないのですがイメージが沸きますでしょうか?
ここでちょっと一言:乳化性とは・・・
当社で扱う靴クリームは、いずれもペースト状の乳化性タイプです。
缶に入った半固形状の油性や、液状のタイプのクリームに比べ適度な水分がある為、革への浸透性保革性柔軟性に優れしっとりとした仕上がりになるのが特徴です。
仕上げ用のワックスとして最後にご紹介するのは、コルドヌリ・アングレーズ社「ビーワックス」(Bee Wax)です。
忙しい時の靴のお手入れにはこれ一本で十分と言われる優れものです。

●○●コルドヌリ・アングレーズ社 ビーワックス(Bee Wax)●○● (フランス製)

【成分】ろう(蝋)・油脂・有機溶剤
【用途】
艶出しと同時に栄養を与える仕上げ剤。
【特徴】
補色クリームだけでは艶が少ないと思われる時に、皮革の表面にロウの膜を造ることで光沢を与える。
精製された動物性の「蜜蝋(みつろう:Bee Wax)」がたっぷりと使われているため艶出しと同時に革へ栄養分を与えることが出来る。
革に浸透しやすい乳化性のため磨き込むほどに重厚感のある艶が出る
ここでちょっと一言:蜜蝋とは・・
このワックスの最大の特徴はその名の通りミツバチ(Bee)が巣を作る際に腹部の器官から分泌される「蜜蝋(みつろう)」という成分がブレンドされていることです。
一般的な固形ワックスは、脂と蝋(ろう)だけで出来ているのですが、ビーワックスは蜜を採取した後に残るミツバチの巣から溶け出した栄養分たっぷりの「蜜蝋」が含まれています。
はちみつのような甘い香りがするのはその為なのですが、この蜜蝋には
治癒特性(保湿性・柔軟作用)などもある為、「蜜蝋」は軟膏・リップクリーム・石鹸などの化粧品基材の優れた原料としても使用されることもあります。
また、この蜂が生み出す蜜蝋の量は、蜂蜜の量の10分の1しか出来ないものだそうで皆さんが想像される以上に貴重なものです。
☆最後に一言:靴の光沢とは・・
靴の光沢感や防水力は、ブラッシングによって起きた摩擦熱で ろう(蝋)が革の凹凸に溶かし込まれ、革に平らな保護膜が作られるから出来るということは、皆さんもご存じのことと思います。

また、ろう(蝋:Wax)の薄い保護膜は靴を傷や浸水・乾燥などのダメージから守ってくれるという効果もあります。

ですから、靴を磨くときはシュッシュッと摩擦熱が出るように一生懸命に擦ることが大切なのです。
ただ、足の甲の部分など履き皺の出るような部分に「ビーワックス」で光沢を出すと、ろう(蝋)分が多いため、折角作った膜が足の動きの中で壊れ、白く吹き出てしまうことがあります。
 このためビーワックスは、主に芯のある箇所(つま先部、かかと部)だけに使用するようにして、足の動きが影響する部分は、ろう(蝋)分の少ない「補色クリーム」で磨かれた方が良いです。


今回は「靴クリームの成分」をテーマに調べてみましたが、皆さまの「お手入れ」のご参考になりましたでしょうか?
そろそろ足元に寒風が吹き付ける季節となりますが、靴先がボロボロではいかにも寒々しいですから皆さんの靴にも靴のクリーム・ワックスで光沢というコートを着せてあげてみてください。